板金塗装と簡易塗装

 車体の傷やへこみなどの修復と再塗装には、従来の板金塗装と、近年簡易板金と呼ばれるようになった工法のどちらかが用いられます。
 簡易板金は、従来の板金塗装とどこがどのように違うのでしょうか。

 なお平山ボデー整備では、従来の板金塗装を専門に行っています。



○ 簡易板金

 基本的に簡易板金は、車体の擦り傷や小さなへこみなど、軽微な損傷の簡易補修に用いられるやり方です。
 部品単位の完全な修復ではなく、車体の傷を外から見えなくするのと同時に、傷がそれ以上悪化することを防ぐのが目的です。
 『安くて速い』ので、ちょっとした傷直しには、便利でしょう。
 
 たとえば小さく軽いへこみの修復の場合には、従来の板金では車体のへこんだ部分の鉄板を裏側から叩きだして、まず本来の形にできる限り近づけます。
 簡易板金の場合はその変形を元に戻すことはなく、へこんだ部分にパテ(接合剤、穴埋め剤)を盛ることで修正しますから、鉄板のへこみ自体はそのままです。(※へこみがかなり大きければ叩きだしも行います。)
 特にこの叩きだしの行程を省略することが、”簡易”な板金塗装だと呼ばれる理由です。

 簡易板金のパテなどには感光性樹脂が用いられます。光線によって急速硬化するもので、従来の自然乾燥を基本としていたパテなどより、大幅な作業時間の短縮が実現されています。
 ただしプロのレベルで言うと、乾燥を急ぐためにどうしても巣穴などが残りやすく、補修の精度はやや低いようです。
 
 簡易板金の塗装は、通常の塗装工程で用いられることもある強制乾燥装置を使って、塗料の乾燥を自然乾燥よりも早めます。
 ただし普通に考えると、現在の技術では、乾燥を早めるにしても最低2、3時間が最短の時間です。
 特に部分的な補修の場合は乾燥を速くすることによって、それまであった塗装部分と再塗装の部分が、時間をかけて乾燥させるよりもどうしてもなじみにくく定着しにくくなります。
 そのため再塗装した塗料の境目がはがれ落ちたり、時間が経つことによって変色したりする可能性が少々高くなってしまいます。
 特にパールやメタリックなど、やや特殊な色の車種では、塗装は急がず丁寧に行うことが基本です。


 簡易板金は、小さな傷を直すのに非常に便利です。
 ただ、場合によっては望んだような仕上がりが得られないこともありますので、そこは十分理解してから利用されることをおすすめします。